みなさんこんにちは、かいです。
文房具、筆記具好きに限らず、「ロットリング」の名前を聞いた経験のある方はおられると思います。
ペンの胴軸に「赤い輪」が付いていることで有名な、あのメイカー名であり、そこが発売している製図用ペンを指して「ロットリング」と呼ぶこともあります。
そんなロットリングの製品の中でも、「メカニカルペンシル」、いわゆるシャープペンシルですね。
このメカニカルペンシルの「500」と名付けられたシリーズを紹介します。
もくじ
ロットリングとは?
ロットリングは、ドイツ ハンブルクに本社がある筆記具メイカーです。
現在では製図用ペンのみならず、製図用具やシャープペンシル、ボールペンなども製造しています。
ロットリングの歴史
1928年、創業者であるウィルヘルム・リープ氏はそれまでになかった全く新しい万年筆を考案します。
それが、ニブ(ペン先)のない万年筆です。
ペンの先端に付けられた極細のパイプと、そのパイプの中に挿入される、さらに細いワイヤーによってインクの流れを調節することができるという構造のペンでした。
このペンは構造上、細い線をぶれずに長く描くことができるために製図に向いており、瞬く間に世界中でヒットしました。
1931年にはパイプ状のペン先を持つインクペンとして特許を取得しました。
翌1932年にはこの製品が世界34か国へと輸出されます。
この製品は「ティンテンクリ」と呼ばれました。
ティンテ(Tinte)はドイツ語で「インク」
クリ、クーリ(Kuli)は同じくドイツ語でクーゲルシュライバー(Kugelschreiber)つまり「ボールペン」の口語です。
さらに1935年にはマルチペン「4カラーペン」を発表します。
現在では多色ボールペンなどで普通に使われているツイスト機能を持たせたペンでした。
1961年には商品の精度の高さを証明する「赤い輪」が、ロットリング社の公式トレードマークとなります。
ドイツ生まれの製図用ペン
私がロットリングの社名とその存在を知ったのは専門学校に入学した直後のことでした。
デザインを学ぶ学校に入学したのですが、そこで教材として購入した数多くのツールの中にロットリング社の製図用ペン「イソグラフ」のセットが含まれていたのです。
これはインク補充式のペンで、4種類の太さのペンとインクなどがセットになったものでした。
はっきりと覚えていないのですが、いちばん細いペン先の径は0.1㎜か0.15㎜だったと思います。
当時はまだ専門的なツールをほとんど何も知らなかったため、このイソグラフの存在には驚きました。
何しろ、とても細い線を安定して描けるのです。
さらに、それまでは細い線を描こうとする時の選択肢と言ってもボールペンやシャープペンシル、あとはつけペンの類くらいしか知りませんでしたので、墨汁のようなインクを用いる補充式のペンというものは、考えたこともありませんでした。
そして、そのペン先が引く線の細さと正確さに驚きました。
経験者の方でしたらよくわかると思いますが、つけペンの類は描き手の筆圧で自在に線の幅を変えることができます。
太くしたり細くしたり、描き手の技巧のレベルでかなり自由な表現を出せるものです。
ですがイソグラフは、ペン先が極細のパイプ状になっているため、筆圧の強弱で線を調節することができない構造なのです。
やはり製図用に作られたペンですね。逆を言うなら、筆圧の強弱で線の幅が変わってしまったら製図が見づらくて仕方ないですね。
さて、私はロットリング社の製品の精度の高さに感心し、同時に同社の他のツールにも興味が湧きました。
ロットリング500
私が通っていた専門学校の近くにはそこそこ規模の大きい文具店がありましたので、時間を見つけて通うようになりました。
もちろんロットリング社の製品を探すためです。
そこで私が見つけたのは、タイトルにもあるロットリング500というメカニカルペンシルのシリーズでした。
それまで私が使用していたシャープペンシルといえば、いわゆる普段使いのためのもので、可愛らしいデザインやキャラクター商品などがほとんどでした。
ですが、文房具店で見たロットリング社の500は、「必要なもの以外は備わっていない」という雰囲気を醸し出していました。
黒い樹脂製のボディと金属製のローレット。
シンプルなクリップ。
地の色である黒に映える赤でプリントされた企業名と商品名。
そして、唯一のアピールであり、製品の品質の高さを証明する「赤い輪」。
さらに、製図用である事を表すように4㎜の長さを持つスリーブです。
ロットリング500は、全体的にシンプルなデザインを持つシャープペンシルだと思います。
無駄なものが一切ないからこそシンプルなのです。
必要なものだけを備えて作られた製品です。
だからこそ私は美しいと感じます。
文房具店でこのペンシルを見て、私はすぐにでも欲しい、と感じました。
ところで、その当時の私はシャープペンシルの芯の太さは0.5㎜のものしか知りませんでした。
ですが、件の文房具店で見たロットリング500には、芯の太さ0.35㎜のものがあったのです。
私はこれにも驚きました。
「0.35㎜ってどんだけ細い線を描けるんやろ?」
という興味も手伝って、その日のうちに0.35㎜仕様のロットリング500を購入しました。
ロットリング500の使用感
さて、私はその日からロットリング500の0.35㎜のモデルを使うことになりました。
握ってまずわかるのが、その剛性の高さです。
500はボディが樹脂製なのですが、ローレット部分とのつなぎ目が無いのではないか?と感じるほどにしっかり作られています。
さらに学校やプライベートでかなりハードに使用した結果、いくつか分かったことがあります。
まずひとつに、これは私の手や指のサイズが原因の可能性があるのですが、ローレット部分を握って筆記していると、長時間の使用がキツくなるということです。
ロットリング500のローレット部分はペンの先端部に向けて緩やかに細まっていくような形に作られているのですが、長時間使用している間に、何度も握り直していることに気づいたのです。
結果として、私はローレット部分よりも少し尾部に近い位置を握って使用することにしました。
少し不自然に感じていましたが、慣れてくるとあまり気にはなりません。
これはもしかすると、私の手のサイズだけではなく、ロットリング500が製図用に作られているから、ということも理由として考えられます。
私は製図については全く詳しくないのですが、私のように筆記や描画に使用する場合と、製図に使用する場合ではペンシルの角度が異なっているのかもしれません。
製図はペンを定規に当てて使用することがほとんどですので、一般的な筆記状態よりもペンシルを立てで使用するのかな、と考えたりします。
その状態での長時間使用には適しているのかも知れないですね。
もうひとつ気づいた点ですが、これについてはのちに購入したロットリング600というメカニカルペンシルと比較しての事です。
ロットリング600はローレット部分だけに限らず、ペンシル全体が金属で作られています。
そのため、どうしても重量が500よりも重くなるのです。
ロットリング500は重量が13g、対する600は22gとなっています。
9gという差異は数値のみを見ると微々たるものですが、指先で握って使用するとそうとも言い切れません。
結果を言うと、500の方がコストパフォーマンスに優れている、と感じます。
ただし、あくまでも製図に使用しない、と言うことが前提です。
製図用ペンシルを製図に使用しないというのもおかしな話かもしれませんが、かっこいいペンシルは普段から使いたいものです。
ロットリング500とロットリング600の価格差は、参考価格上ですが約1000円程ロットリング500の方が安価になります。
これはかなり大きい差です。
なぜなら、ロットリング500の方は、購入する店舗、あるいはウェブストアにもよりますがおおよそ1000円を少し上回るくらいで購入できるからです。
つまりほぼ2倍の価格です。
個人的な考えですが、ロットリング600を1本購入するよりも芯の太さの異なるロットリング500を2本購入する方が、さまざまなシチュエーションに対応できるのではないか、と思います。
例えば0.35㎜と0.7㎜を選択するとか、ですね。
たしかにロットリング600の仕上げは見事なものです。
艶消しの黒、あるいは銀に近いグレイのボディは、見惚れてしまいます。
しかし、あくまでも通常の筆記や描画に使用するのなら、握った感覚と重量のバランスが取れている500の方が扱いやすいと私は感じます。
まとめ
ロットリング社のアイテムはどれも魅力的なものばかりですが、文房具好きの観点から見るとやはりメカニカルペンシルには興味を惹かれます。
今回紹介した「500」シリーズ以外にもいくつかのメカニカルペンシルが販売されており、どれも製図用ペンシルとしては世界的に認められ、愛されているツールです。
私のように日常的な筆記や描画に使用するにも充分過ぎる性能であり、少し高価なシャープペンシルとして毎日ハードに使い込むのもいいと思います。
それでは今日もよいカキモノ日和となりますように。