パロミノ ブラックウィング

みなさんこんにちは、かいです。

鉛筆といえば、多くの人に馴染みの筆記具であり、子供の頃から使い慣れているツールだと思います。

今から約90年前に誕生し、「伝説」とまで呼ばれた鉛筆が存在しました。

今回は「ブラックウィング」というその鉛筆を紹介します。

目次

ブラックウィングとは?

ブラックウィングを生み出したエバーハルド・ファーバー社

ブラックウィングは、エバーハルド・ファーバー社(Eberhard Faber GmbH)によって、1930年代から1998年まで生産されていた鉛筆の製品名です。

エバーハルド・ファーバー社の創始者はヨハン・エバーハルド・ファーバーといいます。

彼は1822年12月6日にバイエルン州ニュルンベルク市の近くのシュタイン村で生まれました。

彼の父、ジョージ・レナード・ファーバーは、有名なファーバー家の子孫です。

ファーバー家はバイエルンに古くから続く家系の1つであり、鉛筆の製造業に従事していました。

このファーバー家の血を引いているのが同じく筆記具メイカーとして有名な「ファーバーカステル」の創始者、「キャスパー・ファーバー」です。

さて、ヨハン・ファーバーは小学校教育を受け、その後ハイデルベルク大学で法学を学ぶために入学しました。

しかし、彼はアメリカで商取引のキャリアを追求するために途中で研究を辞めたそうです。

彼は1848年に米国に移り、1849年にニューヨークの133ウィリアム通りに文房具店を開きました。

画像はイメージです。
画像はイメージです。

その後1877年に彼はブロードウェイに店を移動しました。

1852年に、彼はレッドシーダーの丸太をスタインのファーバー鉛筆工場に輸出し始めました。アメリカで入手可能なレッドシーダーは鉛筆の芯材として理想的であることに気づいた為です。

1861年に、彼はマンハッタンのミッドタウンにある41番街と43番街の間のイーストリバーに沿って最初の鉛筆工場を開設しました。

工場はエバーハルド・ファーバーの名前で設立されました。

1872年、火災によりマンハッタンの工場が破壊され、ブルックリンのグリーンポイントのケント通りとウェスト通りに新しいエバーハルド・ファーバー鉛筆工場が建設されました。

新しい工場は業務拡張を見越して設計され、ヨハンが亡くなるまでに、彼の工場は米国で最大の規模であり、ファーバーの名前は世界中で知られていました。

ヨハン・ファーバーは1879年3月2日にニューヨークで亡くなりました。

彼はニューヨークのブルックリンにあるグリーンウッド墓地に埋葬されています。

クリエイターに愛された鉛筆

ブラックウィングのルーツは、1930年代にエバーハルド・ファーバー社によって発表された「モデル602」に遡ります。

この鉛筆は当時を生きた多くのクリエイター達によって使用されました。

アメリカの作家ジョン・エルンスト・スタインベック、同じくアメリカの作詞家であり作曲家でもあるスティーブン・ジョシュア・ソンドハイム、指揮者、作曲家として有名なレナード・バーンスタインなどは作品を執筆するときにモデル602を愛用していたそうです。

画像は株式会社エス・アイザックス商会より。
画像は株式会社エス・アイザックス商会より。

当時作られたモデル602のキャッチフレーズは

“Half the pressure,Twice the speed”

です。

「半分の筆圧、2倍の速度」ということですが、これを実現するような書き味だったのでしょう。

復刻されたモデル602。キャッチコピーは健在です。
復刻されたモデル602。キャッチコピーは健在です。

キャッチフレーズが表す書き味の他、ブラックウィングには大きな特徴があります。

それが、鉛筆尾部に取り付けられた大きな四角い消しゴムです。

開発から長い年月を経て、ブラックウィングが上質な鉛筆であることの代名詞といわれるようになった時、ユニークな形の消しゴムは切り離すことのできないアイテムとなっていました。

ブラックウィングの消しゴム。
ブラックウィングの消しゴム。

ヨハンが作り上げたエバーハルド・ファーバー社は1988年以降はファーバーカステルU.S.A.社や、サンフォード社へと企業買収されることとなります。

その結果、1998年、多くの愛用者から惜しまれブラックウィングは生産中止されてしまいます。

パロミノブランドとしての復刻

ブラックウィングの生産中止の後も、この鉛筆の人気が衰える事はありませんでした。

アメリカのインターネットオークション、ebayにおいて、未使用のブラックウィングが1本40ドルにも高騰した事があります。

そして生産中止から10年以上が経ったとき、ひとりの人物がブラックウィングの名前を再び世に出すために動き出しました。

家業である鉛筆産業に携わっており、パロミノブランドの創始者でもあるチャールズ・ベローズハイマー氏です。

ベローズハイマー氏はカリフォルニア産のインセンスシーダーと日本製の芯を組み合わせ、ブラックウィングの名を再び市場へと出したのです。

この復刻の理由の一つとして、パロミノブランドの鉛筆のもつ品質が、かつてのブラックウィング602に非常に近いということをアーティスト達が噂しはじめた事が挙げられます。

かくしてブラックウィングの名は再び世に出ました。

この鉛筆はアメリカ国内のメディアなどからも注目を浴びることとなり、絶賛されたということです。

ブラックウィングの芯の特徴

さて、パロミノブランドとして復刻したブラックウィングには、鉛筆の径よりも幅の広いユニークな消しゴム以外にも、大きな特徴があります。

それが、芯の硬度表記です。

普通鉛筆には数字とアルファベットを組み合わせた硬度表記がされます。

例えば日本国内ではJIS規格に基づき芯の柔らかい方から順に6B, 5B, 4B, 3B, 2B, B, HB, F, H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 7H, 8H, 9Hの17種類が存在します。

厳密には2008年から三菱鉛筆が7Bから10Bまで、そして10Hの計5種類を販売開始しました。

そしてヨーロッパでも表記については現在の日本と同じものが使用されていますが、芯の硬度については日本のJIS規格とは異なっています。

そして、ブラックウィングで採用されているのがオリジナルの硬度表記、FIRM、SOFT、BALANCE、EXTRA FIRMの4種類です。

FIRMは硬度で表すとB程度、硬い芯です。

BALANCEは硬度で表すと2B程度です。

SOFTは硬度で表すと4B程度、もっとも柔らかい芯です。

そして最近になって新しく追加されたEXTRA FIRMはもっとも硬く、硬度で表すとHB程度の芯です。

パロミノ ブラックウィングでは4種類の芯の硬度を持つ鉛筆それぞれに異なる名称を付けています。

FIRMの芯を持つ鉛筆はブラックウィング パール。これはパールホワイトの塗色がなされています。

BALANCEの芯を持つ鉛筆はブラックウィング602。ガンメタルグレイの塗色です。

SOFTの芯を持つ鉛筆はブラックウィング。これには艶消しの黒い塗色が施されます。

もっとも新しいEXTRA FIRMの芯を持つ鉛筆は塗色なしのブラックウィング ナチュラルです。

画像上からブラックウィング602、ブラックウィング、ブラックウィング パール。
画像上からブラックウィング602、ブラックウィング、ブラックウィング パール。
EXTRA FIRMの芯を持つブラックウィング ナチュラル。
EXTRA FIRMの芯を持つブラックウィング ナチュラル。

さらにブラックウィングはさまざまなコラボ商品が発売されており、この4種類以外の塗色が施されたものがあります。

ブラックウィングの使用感

さて、私が初めて使用したブラックウィングシリーズは「ブラックウィング(黒)」でした。

芯硬度4B相当です。

私は普段から鉛筆を使用する際、ほとんどHBか2Bを選択します。

ですので、4Bの芯というのは長年使用した覚えがありませんでした。

愛用のカール事務器製鉛筆削り機で芯を研ぎ出し、紙面に芯先を当てます。

このとき使用したのはマルマン ドローイングブロックです。

鉛筆を走らせてすぐに、私は驚きました。

まるで芯先が紙面に張り付いているような感覚を覚えたからです。

大袈裟と思われるかもしれませんが、本当に未知の感覚でした。

正確に表現するなら、「鉛筆の芯先から受ける感覚」としては初めてのものです。

まるで粘度の高いグリスが芯先に付けてあり、鉛筆を紙面に走らせてもそれがいつまでもなくならずに粘りついているような感じです。

全くと言っていいほど紙面の凹凸に芯先が引っかからず、線を引けば引くほど、まるでチョークか何かのように見る間に芯がすり減っているのではないかと心配になるほどでした。

ブラックウィング(黒)とポイントガード。
ブラックウィング(黒)とポイントガード。

比較対象として「ステッドラー マルス ルモグラフ」の4Bを使用しました。

確かにこれも柔らかい芯なのですが、線を引く中に「かさかさ」と表現するような、芯が紙面に引っかかる様な感覚が指先に伝わってきました。

念のため同じくステッドラーの7Bも使用しましたが、同様のかさかさ感はありました。

ブラックウィングにはこのかさかさ感がありません。

前述の通り、まるでオイルかグリスを固形にしたものを芯として使用しているようです。

同様に「602」、「パール」も使用してみました。

「602」は「黒」よりも芯が硬いため、やはり比べると指先に伝わる感触が若干の硬さを表していますが、それでも驚くべきものでした。キャッチフレーズである「半分の筆圧、2倍のスピード」に偽りなし、といったところでしょうか。

「パール」も同様に芯の硬度は高いため、硬さは指先から伝わってくるのですが、やはり紙面を走る芯先に引っかかるような抵抗がありません。

まとめ

現在4種類の硬度の芯が発売されていますが、私が個人的に気に入ったのはブラックウィング(黒)でした。

とにかく線を引く時の指先に伝わる感触が小気味よく、いつまでも何かを描いていたいと思わされます。

普段使いで使用するなら「602」が扱いやすいように感じます。

1930年代に生まれ、多くのユーザーに愛されながらも一度は失われた鉛筆、ブラックウィング。

私たちは当時のブラックウィングを手にすることはできないと思いますが、復刻されたブラックウィングはさらに多くのユーザーを惹きつけ、世界中でクリエイターたちの思いやイメージを具象化するために働き続けるでしょう。

1本の鉛筆としてみるとかなり高価なツールですが、ブラックウィングの収益の一部は、アメリカ国内の幼稚園から高校までの子供達の音楽教育、芸術教育のための活用されているそうです。

鉛筆のみならず、優れたアナログのツールを愛する方々は、ぜひ一度ブラックウィングを試してみることをお勧めします。

それでは、今日も良いカキモノ日和となりますように。

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