#3 万年筆って流行ってます?

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万年筆ってどんなペンなの?

みなさんこんにちは!かいです。

みなさんは万年筆を使って文字やイラストなんかをかいた事はありますでしょうか?

最近では国内、国外を問わずさまざまなメイカーから初心者向け、或いは比較的安価な万年筆が発売されており、「ちょっと興味あるな」という方でも手が届きやすいツールになっています。

文房具、中でもペンがあくまでも筆記、描画のためのツールとしてだけではなく、趣味性を持ったアイテムとして世間でも認められてきています。

私が初めて万年筆を手にとった時なんかは、まだまだ万年筆は高価で手が届きにくいものとして認識されていたと思います。

最近では万年筆を特集した書籍なんかも発売されていますので、年齢層の若い方にも万年筆についての知識がある程度浸透しているかもしれませんね。

ここで万年筆について、一体どういったものなのかを簡単に説明しますね。

万年筆の仕組み

万年筆は、ペン軸と呼ばれる筆記の時に握る部分の内部にインクの入ったタンク(インクカートリッジ)があり、そこから毛細管現象により溝の入ったペン芯を通じてペン先にインクが持続的に供給されるという構造を持った筆記具です。

インクカートリッジを使用したタイプのほか、ペン軸自体がインクを吸い上げる機構を持ったピストン吸入式、インクカートリッジの代わりにコンバーターと呼ばれるインク吸入器を取り付け、インク瓶に差し込んだペン先からインクを吸い上げてコンバーター内にインクを保持させる方式もあります。

インクカートリッジ式やコンバーター式のペンは機構が破損しても交換が容易にでき、ペン自体にかかる負担もほぼ無いため、比較的手軽に万年筆を使用することができます。大半のカートリッジ式万年筆は、カートリッジとコンバーター両方を使用できるようになっています。

画像上からインクカートリッジを装着した状態、新品のインクカートリッジ、インクを入れていない状態のコンバーターです。

さらに、ピストン吸入式に比べてペンの洗浄が簡単にできるため、さまざまなインクを試したい方には向いているかも知れませんね。

画像はピストン吸入式のペン。万年筆尾部をくるくる回す事でペン軸の中にあるピストンが動き、ペン先からインクを吸い上げる事ができます。このタイプは万年筆自体に機構が組み込まれているのでカートリッジやコンバーターは装着できません。

ただ、万年筆のメイカーによってはカートリッジ式専用でコンバーターは不可といったペンもあるため、購入の際にはよく調べた方が良いです。

さらにさまざまなメイカーから販売されているインクを使ってみたい、とかインクの混成をしてみたいという方もおられると思います。ただし、国内の万年筆メイカーは自社で販売しているインクのみを使用することを前提としている場合が多いため、あくまでも自己責任で使用するようにしてください。

ペン先って大事なんです!

万年筆はかつて、つけペンにとって代わる新しい時代の筆記具でした。それまではインク壺にペン先をひたし、インク自体の表面張力によってペン先にインクを保持して筆記する、いわゆるつけペンが用いられていましたが、つけペンよりも多量のインクをペン軸内に保持できる画期的なシステムにより、万年筆は広く受け入れられることとなります。

ですが、これと同じ機構はボールペンの登場により、特別なものではなくなります。さらにボールペンは、万年筆と違って面倒なメインテナンスが不要であり、比較的安価で量産できるため、まさに万人に受け入れられる筆記具となりました。

「万年筆は使い手に馴染む」というふうに言われることがあります。これは、基本的に金属で作られているペン先が、長年同一人物によって使用されることにより、その使い手の筆記角度、筆圧などの「クセ」が付き、さらに使用者に馴染んでいくという事です。このため、特定の個人が長年使用した万年筆は貸し借りには向かないと言われるようです。

万年筆のインクはメイカーによって数多くの色が作られており、最も普及している染料インクや、染料インクより耐水性には優れるが色の種類では染料インクに劣る顔料インクなどがあります。

万年筆のペン先はカートリッジやコンバーター、またペン軸内にインクが入っている限りは常時インクと接触しており、そのため耐酸性が求められます。

ある程度高価な万年筆の場合、ペン先には金(14Kから18K)が使用されます。安価なものでしたら鉄かステンレススチール、さらにそれらに鍍金(めっき)が施されたものもあります。

 画像のペン先はステンレススチール製です。

ペン先に金が使用される理由の一つとして、金が持つ柔軟性が挙げられます。

こちらは金にロジウム装飾を施したペン先です。

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ロジウム装飾って?
ロジウムとは白金族に属する貴金属です。白金族とはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の総称です。その中でも硬く、強い耐食性を持っています。

物理的性質や化学的性質が互いによく似ているため、同じ族として扱われます。
これを鍍金として使用したものをいいます。
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万年筆に限らず現在販売されているほとんどのつけペン(ガラスペンを除く)のペン先は中央部に「切り割り」と呼ばれる切れ込みが入っており、その切り割りは丸型やハートの形をしたハート穴まで通じています。このハート穴は筆記、描画することによってインクタンクから排出されたインクと同量の空気をペン内部に送り込む役割があります。

またペン先にハート穴の備わっていないモデルもありますが、これらのモデルはペン先を支えている「ペン芯」に空気穴を開けて代用しています。

ペン芯というのはインクタンクからペン先までインクを導き、排出したインクと同量の空気をインクタンクまで取り込むための細い溝が切られている部品です。

「M」とプリントされている金属部分がペン先です。プリントされたアルファベットの上部に見える丸い穴がハート穴、そこから先端まで伸びる細い切れ目が切り割りです。
ペン先を取り外すとペン芯が露出します。先端部から2本の細い溝が切られています。これがインク溝と空気溝です。
万年筆の種類によって分解できる部分はさまざまです。上の画像のペンはペン先とペン芯部分が丸ごと取り外せます。

さて、ペン先の話ですが、金を用いることで柔軟な書き味になるといわれます。筆圧の強くない書き手が用いた場合でもよくしなるため、味のある文字になります。

鉄やステンレススチール製のペン先は金のものに比べて柔軟性に劣ります。ですがこれがイコール書き味が悪いというわけではありません。あくまでも書き手の好みに合っているか否か、ということです。

筆圧の強い書き手でペン先が硬いものが好みだという方もいらっしゃるでしょう。私も以前はペン先のよくしなるものを多用していましたが、最近では硬めのステンレススチール製のものを使うことが多くなりました。

文字を書く方はともかく、イラストなどに万年筆を使用する場合は、ペン先がステンレススチール製のものを使うのがいいかも知れませんね。あくまでも個人の考えですが。私もそうしてます。

金属製のペン先のさらに先端部に、小さなふくらみのようなものがありますよね?この部分は「ペンポイント」と呼ばれます。

ペンポイントはイリドスミンという合金の玉がペン先を構成する金属に溶接されています。以前はイリジウムの玉が使われていたのですが、最近はほとんどのものがイリドスミンのようです。

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イリドスミン?何ぞそれ
上記のロジウム装飾の項でも触れましたが、白金族元素の中にオスミウムというものがあります。
さらに同じく白金族元素にイリジウムというものもあります。
このオスミウムとイリジウムの天然合金をオスミリジウムと呼びますが、その中でもイリジウムの含有率が70%を超えるものをイリドスミン、もしくはイリドスミウムと呼びます。
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要するに硬くて耐摩耗性に優れるから使ってますよ、という事ですね。ペン先の材質である金では弾力はあるけれどすり減るのも早いためです。

ペン先の幅(太さ)について

万年筆のペン先には複数の種類があります。太さについてですが、EF(極細字)、F(細字)、MF(中細字)、M(中字)、B(太字)、BB(極太字)などがあります。さらにメイカーによってはC(特太字)というものもあります。

ちなみにこのペン先の太さですが、各メイカーで規格が異なっており、例えば同じEFのペン先であってもA社のものとB社のものでは文字の幅が違っていたりします。

万年筆の書き味はまさに千差万別です。ペン先の材質や幅、胴軸(筆記する時にペンを握る部分)の太さや材質、ペンの重さ、バランスの位置など、たくさんの条件が重なって書き味を生み出します。書き手である私たちは、自分に最も馴染むペンを探すことがあります。ですが、万年筆は私たちが愛着をもって接する時、たとえ高価な品でなくとも、私たちにとって最上の一本となるのです。

私が初めて万年筆に触れたのは記憶が正しければ小学校高学年の時です。ロットリング500シリーズの項でも触れましたが、初めてシャープペンシルに触れたのと同時期でした。

漫画で見たのか友人から聞かされたのか、きっかけは憶えていないのですが、万年筆に興味を持った私が母親に「万年筆を持っているか?」と尋ねたところ、自室から一本のペンを持ってきてくれました。

パーカー45というモデルです。

それが上の画像にあるペンでした。アメリカの筆記具メイカー(現在ではイギリスのブランド、生産拠点はフランスにあります)、「パーカー」の万年筆です。

胴軸部分にヨコハマタイヤのロゴが入っていますね。母は若い頃、地元のガソリンスタンドで働いていた時期があったので、おそらくその時に入手したのでしょう。

この45というモデルは、ペン先が硬めであまりしならず、私好みのペンです。私が所有しているこのペン自体、おそらく40年近く前のものだと思いますが、もちろん現在でも使用できます。パーカー45は1960年に発売されたモデルですが、現在でも販売されているようですので、かなり息の長いモデルですね。

ペン先の調整?

ちなみにこのペン先という部品ですが、工業製品というくくりもあって稀にではありますがいわゆる「ハズレ」に出会うことがあります。私が所有しているペンの1本はペン先の切り割りが左右均等に切られておらず、筆記に耐えないほどのものでした。

使い始めた当初は「どうも書きづらい」といった感じが強く、ニブ(ペン先)の研ぎ直しをしてみたのですがそれでも直らず、まさかと思ってペン先を正面から入念に見ると、ペンに対して垂直に切られていなければならない切り割りが垂直ではなく、若干斜めに切られていました。

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ペン先の研ぎって?
万年筆のペン先は各メイカーで出荷前に最終調整を行います。
基本的にはどのような角度で筆記しても書けるようには調整されていますが、書き手の好みによってペン先の状態を変更させることができます。
調整師はさまざまなツールを使用しますが、ラッピングフィルムと呼ばれる極微細(#10000くらい)の紙やすりでも簡単な調整はできます。
私はラッピングフィルム上でペン先を軽く擦るようにして自分好みの書き味になるまで調整します。
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ラッピングフィルム

使用を諦めきれなかった私は何度かニブの研ぎ直しをしたのですが直らず、購入した際のケースに入れて引き出しの奥にしまってあります。そこそこ高価なペンだったのでショックでした。

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ペン先の研ぎについて
所有者自身の手でペン先を研ぐときは自己責任で行うようにしてください。ほとんどのメイカーで保証が受けられなくなります。
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さいごに

万年筆を所有している方、毎日のように使用している方、あくまでもコレクションとして蒐集している方など、個人の考えがさまざまであることは大前提ですが、万年筆というものが愛着を持つべきツールの一つであることは間違いないと私は考えています。

使い込めば使い込むほど書き手のクセが反映され、さらに書くことが楽しくなります。愛着があるペンは手に持って紙面にペン先を触れさせようとするだけでモチベーションが上がります。

万年筆を愛用している方、これから買ってみようかな、と考えておられる方、皆さんが頭の中で考えたことやイメージなど、自分の思いを表現させることができるツールの一つとして、今よりもさらに愛着を持ってペンに接することができると良いですね。

それでは、今日も良いカキモノ日和でありますように!

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