#10 カヴェコ 万年筆用インク パラダイスブルー

Paradise blue

みなさんこんにちは!かいです。

万年筆という筆記具が、一部の限定されたユーザーだけが扱うような特別な筆記具ではなくなって久しいですね。

これはとても良いことだと私個人は考えています。

近代万年筆が開発されてから約200年が経過しますが、万年筆の原型となるペンは古代エジプトで発明されたそうです。

なんと西暦953年の事だというから驚きです!

現在の万年筆の原型はエジプトのファーティマ朝カリフであるムイッズが衣服と手を汚さないペンを欲したことから、953年に発明された。

https://ja.wikipedia.org/wiki/万年筆#万年筆の開発史
目次

インクの歴史

人が文字や絵などを書きつけるために開発したのが墨だと言われています。

古代中国で墨が使用された形跡があり、今から約2700年程前には存在していたようです。

もしかするともっと古い時代から存在していたのかもしれませんね。

セーラー万年筆株式会社から発売されている顔料インク「ストーリア」の記事でも少し触れましたが、インクには大きく分けて染料インクと顔料インクがあり、初期のインクは鉱物や植物、動物などから採れる天然の染料がほとんどでした。

紀元前4世紀頃の古代インドでインクが使用されていますが、同時期の古代ローマでもイカの墨から作られたインクが使用されています。

さらに時代は近代に近づき、ヨハネス・グーテンベルクという人物が活版印刷の実用化に成功しました。1445年頃、ドイツでの事です。

ですが、当時普及していたインクは煤と糊、水から作られたものと、遡って12世紀に開発された硫酸鉄、没食子、ゴム、水によって成るインクの2種類でしたが、いずれも印刷に適さなかったため、印刷に適した新しいインクの開発が必要でした。

そして、すす、テレビン油およびクルミ油からなるニス状のインクが新しく印刷機用に開発されました。

万年筆用のインク

さて、万年筆に使用されるインクは大きく分けて2種類に分類できます。

ひとつは染料インク、もうひとつは顔料インクです。

正確にはさらにもうひとつ、没食子(もっしょくし、ぼっしょくし)インクというものがごく近代まで流通していましたが、化学的な方法によりインクが造られるようになり、一般的には利用されなくなりました。

没食子インクとは?

まず没食子とは、ブナ科の植物の若芽にインクタマバチという昆虫が産卵し、幼虫が成長することで若芽が瘤状(虫癭:ちゅうえい)に変形しますが、これを指します。

没食子インクの材料としても使われたタマバチの一種とその虫こぶ(写真提供:井手竜也)
画像はナショナルジオグラフィックより引用。

この瘤はタンニン成分を多く含み、これを抽出したもの(没食子酸)に硫酸鉄(Ⅱ)を加えることで染料やインクを作りました。このインクを没食子インクと呼びます。

没食子インクは没食子酸に硫酸鉄を加えることで作りますが、これを濾過し、さらにアラビアゴム(アカシア樹脂)を加えて筆記に利用されました。

調合がうまくいったインクは時間の経過とともに、徐々に濃い紫黒色へと変化します。

羊皮紙に筆記された没食子インクは強固に定着し、水に濡れても落とせません。

その固着力の高さから、訂正する場合は羊皮紙を薄く削り落とすことが唯一の方法だそうです。

このインク色の変化は空気中の酸素によるインク成分の酸化が原因で、これの故にインクの保管にはしっかりと密閉できる容器が必要であり、時間が経つとインク自体が使用できなくなる場合があります。

没食子インクは耐水性、耐久性の高さから、ヨーロッパにおいては1000年以上にわたって筆記用インクとして使用されてきました。

ですが、没食子インクはその酸性の高さから紙への使用には適しません。筆記面を腐食させ、数十年から数年で損傷させてしまうからです。

さらに、同様の理由から万年筆での使用にも適しません。ペンを損壊してしまうからです。

旧来のブルーブラックインク(没食子インクの一種)が持つ酸性の高さもあり、万年筆のペン先は耐酸性の高い金が使われてきました。

画像のペン先は金にロジウム装飾が施されています。

最近ではいくつかの万年筆メイカーから近代的な代用没食子インクが発売されているようです。

pHの調整を行なって腐食性を低下させ、万年筆での使用を可能にしています。これらのインクは「古典インク」とも呼ばれます。

この近代的なインクに含まれる青色(時に紫・赤)の水性染料はインクを筆記中にはっきり見えるようにするための一時的な着色料としても作用しますが、筆記した直後は耐水性はさほど高くありません。

水性染料インクが完全に乾き退色する間に、鉄-没食子酸化合物は少しずつ酸化され、灰色や黒への目に見える段階的な色の変化を起こし、書いたものに耐水性を持たせます。

この色の変化から没食子酸化合物を含むインクを指してブルーブラックと呼ぶこともあります。

ですが、色合いが似ているだけで鉄-没食子酸化合物を含まない水性染料をブルーブラックと称している場合もあります。

近代のインク

化学の技術や研究が進む事で、さまざまな色のインクが私たちの手に届くようになりました。

最近では、多くの万年筆メイカー自社のペン用として鮮やかな色彩のインクを発売しています。

そのほとんどは色彩を優先するために染料インクですが、まれに顔料インクを開発しているメイカーもあります。

以前記事にも書いた「セーラー万年筆株式会社」から発売されている顔料インク、「ストーリア」がそうです。

また、「プラチナ 万年筆」からも同様の顔料インクが発売されています。

カヴェコ パラダイスブルー

そんな中、今回はカヴェコから発売されている万年筆用のボトルインクを使ってみました。

画像はプリコ株式会社より引用。
https://preco-corp.co.jp/products/5236/

全10色が発売されているのですが、カヴェコのインクはどの色もとても魅力的ですね!

私は個人的に青系の色が好きですので、「パラダイスブルー」を選択しました。

濃い青系ではなく、ターコイズに近いです。

カヴェコのインクパッケージのデザインは可愛らしく、インテリアとしても映えるようです。

普段でしたらあまり買うことのないオレンジ系やグレー系の色にも興味が湧きます。

カヴェコのボトルインクは30ml入りで、決して多いわけではありませんね。

パイロットの色彩雫(いろしずく)シリーズですと50ml入りで、さらにカヴェコのボトルインクよりも市場価格が低い場合がありますし、ペリカンのボトルインクは量は2倍以上入ってますが価格がだいぶ低いですので、カヴェコのボトルインクは少し割高感はあります。

色味について

前述のように、このパラダイスブルーはターコイズに近い色味です。

今回はカヴェコを含め、4種類の青系のインクを使って色味を比較してみます。

この4種類を使います。

パイロットから発売されている「色彩雫(いろしずく)」シリーズより「天色(あまいろ)」です。

みんな大好き(かな?)ペリカンから発売されている「ターコイズ」です。

「世界の筆記具 ペンハウス」さんのオリジナルブランド、Pent(ペント)から発売されているオリジナルインク「彩時記(さいじき)」より「夏天(かてん)」です。

Pentシリーズの製造元はセーラー万年筆株式会社です。

では実際に使ってみます。

使用した紙は水彩紙です。ホルベインの平筆を使って描きました。

ペリカンのターコイズと彩時記の夏天は若干近いように感じますが、パラダイスブルーは他の3種類のどれとも異なる色味ですね。

青と緑の間と表現するのが適当でしょうか。

ペリカンのターコイズよりも色味は薄く、透明感があります。

さらに天色もまたペリカンのターコイズより透明感のある明るい青ですが、色の濃さでいうとこちらに近い感じです。

色彩でいうと以前「ストーリア」の時に比較したモンブランのエメラルドグリーンが近いのかもしれません。

モンブランのエメラルドグリーンとセーラー万年筆のストーリア(イエローグリーン)

まとめ

カヴェコの万年筆用ボトルインク「パラダイスブルー」は、一般的に普及していると思われるペリカン社のターコイズよりも薄い色味と透明感が持ち味だと思います

色合いは青というよりも緑が混じったような感じですね。

私はペリカンのターコイズをかなり気に入っており、普段使いにおいてはほとんどの場合、このインクを使用しています。

淡い感じの青系インクを試してみたい方はカヴェコの「パラダイスブルー」を使ってみてもいいかもしれません。

万年筆のインクは自分好みのものを探し始めると、「沼」というなかなか抜け出せない状態にハマってしまいます。

それもまた楽しみの一つではあるのですが、経済面での圧迫に繋がらないよう、ほどほどにしておきたいところです。

それでは本日も良いカキモノ日和でありますように!

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