みなさんこんにちは、かいです!
台湾にツイスビー(TWSBI)という筆記具ブランドがあるのをご存知でしょうか?
会社名は『三文堂筆業有限公司』といい、実に40年以上にわたり、世界中の有名ブランドからのOEMを受け続け、その技術には定評があります。
高級筆記具にとどまらず、LEGO社のブロックなんかもこの会社が生産していたそうです。
このブランドから発売されている、有名な万年筆がエコ(ECO)です。
5,000円程度の価格帯でありながら、カートリッジ・コンバーター式ではなく、本格的な吸入式として製造され、さらに付属の工具によって分解清掃が可能という、コストパフォーマンスのオバケみたいな万年筆として界隈を驚かせました。
今回は、そんなツイスビーブランドの高級ラインであり、フラッグシップモデルである『ダイヤモンド580シリーズ』について見ていきましょう。
まず結論
わたしがツイスビーの万年筆で初めて購入したのは『エコ』でした。
このペンにも正直驚かされましたが、フラッグシップモデルである『ダイヤモンド580』はそれ以上に驚嘆しました。
はっきり申し上げて、いくつもある有名メイカーでは太刀打ちできないのではないかと思うほどに素晴らしい万年筆だと思います。
この万年筆の魅力と、個人的に気になった点を以下に紹介します!
何よりコストパフォーマンスの高さ
ツイスビーダイヤモンドの最大の魅力は、とにかくコストパフォーマンスの高さにあります。
総合的にみてこの万年筆と同等のモデルをこの価格帯で発売するのは、他のメイカーでは不可能ではないでしょうか。
タイトルでは『魅力を4つ』と書きましたが、正直なところ最大の魅力は『コスパの高さ』、これです!
ではどれほどなのか、ひとつひとつ書いていきます。
仕上げの美しさ
『ダイヤモンド』シリーズは標準的なサイズの580』と、コンパクトな『Mini』の二つのシリーズがあります。
この万年筆はいわゆる『デモンストレーター』と呼ばれるモデルのように胴軸やキャップが透明なポリカーボネートで構成されており、さらに表面には摩擦による傷を防ぐためにコーティングが施されています。
そのため中のインクが目視でき、目で見ても楽しむことができます。
さらに名称の由来ともなった胴軸の多面体カットが美しい煌めきを放ちます。
この胴軸部のカットのおかげで真円形の断面を持つほとんどすべての万年筆とは異なり、とても握りやすく、さらに長時間の筆記でも指が疲れにくく感じます。
見た目の美しさはもちろんのこと、ペン自体の剛性はしっかりしており、キャップを閉めたときの一体感はかなり強靭です。
たとえばわたしが所有しているモンブラン№149は、キャップを締め込んだ時にほんのわずかですがガタつきがあります。
もちろんこれは30年以上昔のモデルであることや、材質に起因するものでもありますので、それを含めて受け入れてはいますが、そういった使用するときの不安感のようなものを感じさせない、というのは素晴らしいです。
ちなみにペンの首軸をよく見るとその答えがわかるのですが、切ってあるネジ部分がかなりしっかりしており、繊細さを感じさせません。
この部分については個人によって好みが分かれるかもしれませんが、わたしは気になりませんでした。
それよりコストを下げつつ商品の信頼性を上げる、良い考えだと思います。
これが剛性の高さを出しているわけですね。
さらに根本の部分にはパッキンが入れられているので、少々強めに締め込んでも本体が傷むことはありません。
インクフローの良さ
万年筆というものはその製造工程で職人が関わっているのがほとんどです。
特に繊細なペン先の最終調整については、一本一本人の手で行う場合が多いです。
そのためほとんどの万年筆は箱出しのままでも、インクを入れてすぐ書くことができます。
とはいえ、所詮は工業製品の域を出るものではありませんので、確率としてはわずかですがインクの出が良くない個体もありますし、そういったものに当たらないためにも、万年筆を扱っている専門店で試し書きをしてから購入するのが昔からの定番でした。
ですがインターネットを使って万年筆を購入することができるようになった現在では、専門店で試し書きをしてから購入するというのは、一部のユーザーにしかできない買い方になりつつあるのかもしれません。
今回わたしが購入した個体は、箱出しの状態で非常にインクフローが良く、全く詰まったり掠れたりすることはありませんでした。
以前購入したツイスビーのエコもインクフローは良く、全く問題ない個体でした。
何十本と購入しているわけではありませんので、たまたま運が良かったと言われればそれまでですが、近年販売されている万年筆は余程のことがない限り、インクフローに関しては大きな個体差はないのかもしれません。
初心者でもマニアでも満足!付属ツールで分解可能
ツイスビー エコもそうだったのですが、このペンは付属のツールを使うことで分解清掃が可能です。
シリコングリスも付属しており、綿棒などを使ってピストン内に塗布することができます。
これらのツールはケースの土台部分の裏側に仕込まれています。
万年筆は基本的に精密機器といって過言ではありません。
ピストンの調整や不具合の修理などを、所有者自身で行うのはかなりのリスクが伴うのが当たり前です。
そのため、ほとんどのメイカーは所有者個人での調整を行なったペンは保証が効かなくなります。
あくまでもある程度以上の知識と経験を持った人が自己責任で修理、調整を行うというのがこれまでのセオリーでした。
各メイカーには腕のいい職人がおり、使い手にとって非常に高いレベルで満足できる書き味を作り出すという彼らの仕事込みで、『万年筆は高級な筆記具』という位置付けがなされていました。
ツイスビーの販売方法は、『所有者にメインテナンスを任せる』という、まさに逆転の発想です。
ですが、その思い切った手法によってペン自体のコストを下げる事に成功したのでしょう。
分解や組み立てが一目で理解できる説明書も付属しており、さほど苦労せずにペンの分解や組み立てができると思います。
目移りするよ!豊富なカラーリング
わたしが今回購入したのは『ダイヤモンド580ALR』というモデルですが、レギュラーモデルは『ダイヤモンド580』という名称です。
グリップとピストンの軸にアルミニウムの部品が使用されているモデルが『ダイヤモンド580AL』、さらにキャップトップ(キャップの先端部)、キャップ(の入口部分)、尾軸の一部の合計3箇所に各名称のテーマカラーのリングが施された『ダイヤモンド580ALR』というモデルがあります。
レギュラーモデルをはじめとしてAL、ALRのいずれにも複数のカラーが用意されており、好みの一本を見つけることができると思います。
実はわたしもダイヤモンドの購入を決めたのは最近の話で、シリーズに『プルシアンブルー』というカラーが追加されたことがきっかけでした。
とても美しい青色で、一目見て気に入りました。
ツイスビーの万年筆の素晴らしさは『エコ』で理解していたのですが、正直なところ『さらに高級ラインを購入する必要があるのかな』と考えていました。
エコで満足していたのです。
エコのシリーズにも多くのカラーリング展開がなされており、決して高価ではない価格もあって『まだ数本欲しいな』と考えてもいたのです。
そんな中、わたし好みの『プルシアンブルー』が発売され、はじめてのダイヤモンド580の購入を決めたのです。
結果は大満足でした!
総合的にみて有名メイカーを凌ぐレベル
冒頭でも申し上げましたが、この万年筆が持つパフォーマンスはかなり高いレベルで融合しています。
まず仕上げの美しさ、加工の精度、分解可能な造り、付属ツール、豊富なカラーリング、そして価格帯の低さ。
これら全てが満たされてなお、ツイスビーと同等かそれ以上の万年筆を販売する有名メイカーは無いでしょう。
わたしは国産の万年筆が好きで、何本か愛用していますが、ほとんどのモデルはダイヤモンド580の数倍の価格帯です。
『高価なものだから好き』という考えを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、高価=高品質という図式が全てのものに成り立つわけでもありません。
万年筆に求めるものは使い手それぞれ異なると思います。
たとえば『万年筆といえば真っ黒くてつやつやのボディしか認めない』という方がいるかもしれません。
確かにそういったペンは重厚感があり所有欲を満たしてくれますが、高価であるが故に、万年筆に興味を持ち始めた方が購入するのには少しハードルが高いでしょう。
むしろ万年筆に興味を持ち始めた人たちに、ぜひ手に取ってもらいたいと思えるのがこのダイヤモンド580シリーズです。
ツイスビーのフラッグシップモデルでありながら税込み11,000円という価格で購入できます。
エコの2倍の価格ですが、両方とも使用してみた感想としては、『エコの2倍の価格でも満足できる仕上がり』です。
胴軸の多面体カットの仕上げは、他社から発売されているデモンストレーターと比較してもなんら遜色はなく、むしろ断面が真円でない分、インクを吸わせているときの美しさが目立ちます。
この仕上げは同ブランドのエコとは一線を画したものとなっており、価格帯の違いにも納得させられます。
またキャップ部もエコよりも高価なポリカーボネートを採用しています。
気になった点
あくまでもわたし個人の観点から申し上げるのですが、いくつか気になった点もあります。
ただ、これらについては全く気にならない方もいらっしゃると思います。
ロゴなどが刻印ではなくプリント
まず、キャップ部分にツイスビーのロゴと名称がプリントされているのですが、この部分が剥がれやすいようです。
たまたまわたしが購入した個体がそうだったのかもしれませんが、使用をはじめてまもなく、『DIAMOND』の最後のDの一部が剥がれていました。
多くの万年筆は名称やメイカー名などを刻印するので、ツイスビーのようにプリントが剥がれるという心配はありません。
それに、刻印の方がさらに高級感はでますね。
パッケージが簡素
もうひとつはパッケージの簡素さです。
正直なところこれはむしろメリットにもなると思っていますが、気になる方は気になるかも、といった程度です。
ほとんどの万年筆は緩衝材の入った、しっかりしたケースに収められて販売していますが、ダイヤモンド580は樹脂製のケースに2箇所のストッパーが施されただけの簡素な形で、厚紙の外箱に収められています。
とはいえ、このケースもうまく作られていますね。
万年筆のクリップ部分をうまく使って、ケース内で万年筆が転がらないように固定されています。
ペン先がステンレススチール製
もうひとつは、ペン先がステンレススチール製であることです。
この価格帯の万年筆としては至極当然です。
ただ、『金ペン』と呼ばれる金製のペン先、もしくは金にロジウムコーティングを施したペン先を好む方には受け入れられないかもしれません。
『金ペン』はその材質の特性から筆記時にペンの先端がしなり、また長期間使用することで使い手の筆記時のクセに馴染みます。
つまり、永く使うほど自分の手に合った自分だけのペンになるということです。
スチール製のペン先は金ペンに比べて若干硬く、しなりを味わうのには向いていません。
だからといって『書き味が劣っているのか』と言われれば、それは書き手の好みによる、としかいえません。
上に挙げたこれらの気になった点というのはつまり、コストを下げるためにメイカーが取った選択であって、決してデメリットとはいえません。
ただ、人それぞれ好みによっては『受け入れるのがちょっとね…』という方もいらっしゃると思います。
わたしが改善を望む点は、ロゴとペンの名称をプリントから刻印に変更するという一点のみです。
まとめ
いろいろと書いてきましたが、このダイヤモンド580シリーズは、万年筆に興味があるという方、また万年筆初心者の方、さらにヘビーユーザーの方を問わず、満足できる一本になると思います。
そして恐るべきはそのコストパフォーマンスの高さに尽きます。
ペン自体の完成度の高さと、所有者自身の手で分解、清掃が可能な造り。
キャップを外し、手に握った瞬間ペンが指先に吸い付くように馴染む事に驚かれるでしょう。
あとは心の赴くままにペンを走らせるだけです。
今回はここまでにしましょう。
それでは、今日も良いカキモノ日和となりますように!