みなさんこんにちは、かいです。
主に万年筆好きの間でのみ通用する、ある言葉があります。
それは『インク沼』です。
日本語に『泥沼化する』などという言葉がありますが、その言葉から受ける印象は決して良いものではありません。
何かを探し求めて歩き始めたはいいものの、いつまで経っても望みのものに出会うことができず、彷徨い続け、挙句の果てには自分が何を探し求めていたのかさえもわからなくなってしまう・・・。
この『探し求めていたもの』の対象が万年筆のインクとなるのがインク沼です。
まぁ厳密に言うなら人それぞれと言えなくもありません。
つまり沼にハマるのを楽しんでやっている方も多いということですね。
わたしもそうです。
わたしが万年筆というものを知った頃と比べると、現在では数多くのメイカーがさまざまな色彩のインクを開発、販売しています。
インクに興味がある人間からするとこれは嬉しい事です。
不思議なもので、ある時期は『万年筆のインクといえばやはり青だな』と、いくつかのメイカーの青系統のインクを買い漁っていたかと思うと、『このメイカーのオレンジは美しいな』などと、いつの間にか異なる系統の色に興味を惹かれ、気づけばそっち系統のインクばかり探し求めるようになるのです。
これが際限なく繰り返されるわけです。
『アタマ悪いな』と言われればそれまでなのですが、なかなか湧き上がる思いを鎮静化させることが難しいんです。
さらに人間とは卑劣なもので、自分自身の誤った行いを正当化しようと努める性質があります。
ひと月の間に3つも4つもインクを購入することもありましたが、そんな時、『そもそも使い切ることができるのか?』
と、ふと我に帰ることもあります。
そんな時でも『まあ来月も再来月も新しいインクを購入することはないか』などと声に出して自分に言い聞かせるのです。
そしてまた、新作を見つけたり知らないメイカーを見つけたりすると、懲りることなく購入するのです。
我ながら本当に愚かですね。
まぁいいでしょう。
わたしが未知のインクを購入した際にどのような手順を踏むのかを説明します。
新しいインクをひと瓶購入して意気揚々とキャップを開封し、まずは香りを嗅ぎます。
ここで感動を覚える事もあります。
インクにはさまざまな原料が含まれていますが、中には心を落ち着かせるような香りの成分が入っていることがあります。
かといってエッセンシャルオイルが使用されていると言うわけではありません。
単にいい香り、というのもありますが、個人的に懐かしく感じるような匂いや、何度も嗅ぎたくなるような匂いのインクもあります。
このへんは個人差がありますね。
そして万年筆にインクを入れ、紙との相性をみながら筆記します。
だいたい1時間程度筆記をしたら、まぁ満足しますね。
色合いや時間経過による変色をみて、気に入ったらそのまま次の日も使い続けます。
以前はペリカン社のターコイズが気に入っていて、そればかり使う時期がしばらく続きました。
ペリカン社のターコイズはインクが乾くと、光を反射して青い色の中に赤っぽい部分が差し込んできます。
この色の表情がとても気に入ったのです。
もくじ
KWZ ink
ところで今回からインクを紹介するコンテンツにタイトルをつけることにしました。
『インク沼への第一歩』です。
これまでに紹介したインクも加筆、修正して挙げなおす予定です。
さて、記念すべき第一回目は・・・
『KWZ(カヴゼット)のオレンジ』です!
ポーランドのインク
『KWZ Ink』(カヴゼットインク)は2012年ポーランドのワルシャワ近郊で万年筆用水性筆記インク製造を始め、2015年1月正式にKWZ Inkブランドとして創業致しました。
本製品は創業者で化学者であるコンラッド ズラヴスキー氏とアグニェシカ ズラヴスキー氏夫妻が独自に開発調合した製品で海外のペンショーでも高く評価されました。
(KA-KUオンラインショップより引用。)
KWZ Inkは2020年10月現在で38色がラインナップされています。
内容量は60ml、定価は税込で2310円です。
青系統、緑系統、赤系統などさまざまなインクがありますが、新しくインク界に参入したメイカーであるカヴゼットは、『シーンインク』という、強く光の反射をするという特徴のあるインクを作り出していることでも有名です。
上記のペリカン社のターコイズも程度の強弱の差はあれ、シーンインクのひとつと言えるでしょう。
インクの反射は他もメイカーが販売しているものでも若干起こりますが、カヴゼットのシーンインクは意図的に起こるように作成されています。
他にも『古典インク』と呼ばれる没食子インクも現在14色のラインナップで販売しています。
ちなみにカヴゼットの没食子インクは通常ラインのインクより少し価格が高めに設定されており、定価は税込で2530円です。
試し書きしてみます
外箱はシンプルな白い厚紙でできており、黒い文字で『KWZ ink handmade fountain pen ink』と印刷されています。
箱を開けると、本来ボトルはラップを巻き付けて封印されています。
黒い遮光ボトルに外箱と同様、シンプルなラベルが貼り付けてあります。
ラップを剥がしてキャップを開け、上記のようににおいを嗅ぐと、驚きました。
なんとキャラメルのような甘い香りがするのです。
インクカラーはオレンジなのにキャラメルのような香りとは・・・。
しかもこの香り、『なんとなく匂いがするな』といったものではなく、かなりしっかりと匂いがついています。
万年筆にインクを入れておくと、ペン先から甘い香りが立ち登ります。
こういった遊び心もいいですね。
さて、では万年筆にインクを入れて試し書きしてみます。
今回の試し書きはモンブランの№149 を使用します。
紙はツバメノートの名刺サイズメモを使用します。
色味比較
今回はオレンジ系のインクですので、タイプの似たいくつかの他社のインクと比較してみます。
使用したのはカヴゼットの『オレンジ』、セーラーの四季織から『金木犀』、TACCIAのすなおいろから『橙』、カランダッシュの『エレクトリックオレンジ』、エルバンの『オランジェインディアン』、そしてダイアミンの『サンセット』です。
こうやって書き出してみると、それぞれ特色が分かれます。
色の濃い順にダイアミン、カヴゼット、TACCIA、カランダッシュ 、四季織、エルバンですね。
筆で試し書きしたものをみるとカヴゼットとTACCIA、カランダッシュはあまり差異がないように見えますが、ペンで書いたものだとカヴゼットが明らかに濃いです。
カランダッシュは筆書きだとカヴゼットと大差ないのですが、ペンで書くと6つのなかでいちばん色が薄く見えます。
ダイアミンの『サンセット』はペンで書くとかなり赤に近いイメージなのですが、カヴゼットはそれに近く、他の4つより色味が濃いです。
エルバンと四季織は色の系統が近く、どちらも柔らかいイメージがありますが、エルバンの方が四季織よりもほんの僅か、暗く見えます。
TACCIAは名前通りの橙色で、とてもシンプルな色味です。
カヴゼットのオレンジは発色が良く、はっきりとした線が引けます。
またTACCIAよりも若干色が濃いです。
試し書きの線もかっちりとしたもので、かなり好みのインクです。
さらに、紙に書いたあともわずかですが表面から甘い香りがします。
本編とは無関係ですが
話がずれてしまいますが、これまでわたしはインクの試し書きにモレスキンのノートを多様していました。
最近のモレスキンの紙はかなり質が変化しましたね。
最近といってももう10年以上前からになるのでしょうか。
実はわたしがこれまでこのブログの中で試し書きに使っていたモレスキンは23〜24年くらい前にまとめて買い溜めしておいたものです。
最近になってモレスキンのノートはさまざまなデザインを取り入れたり有名なキャラクターとコラボしており、興味をひかれて数年前に何冊か購入したのですが、万年筆のインクが抜けまくって驚きました。
製造国も変わってしまい、素晴らしいノートと呼ぶことに個人的には抵抗があるものになってしまいましたね。
お値段も決して手軽に購入できる額ではないですし、昔のモレスキンは万年筆での筆記も普通に行えたのですが・・・。
まぁいいでしょう。
万年筆のインクが抜けないことが良いノートの条件ではありませんからね。
モレスキンにはモレスキンの魅力があります。
最近ではかつてのモレスキンを凌ぐようなさまざまなノートが開発、販売されています。
そういったもののレヴューもしてみたいですね。
最近購入したモレスキンは専らポールペンで筆記するときに使用しています。
まとめ
世に出ているさまざまなインクには、集めることを目的として楽しむ方もいらっしゃるでしょうが、やはりインクも高価な筆記具も使用する事に存在意義があるとわたしは考えています。
インク沼にハマっている人は、自分がいちばん気に入るインクを探し求め続けます。
これからインク沼へと踏み出そうとしておられる方、経済的な負担を鑑みて計画的にハマってみましょう。
インクには純正品同士の混成、あるいは熟成という楽しみ方もあります。
これについてはまた機会を改めて紹介できたらと思います。
結構奥が深いんですよね。
それでは、本日も良いカキモノ日和となりますように!