みなさんこんにちは、かいです!
数十年前から日本国内においても、いわゆる『高級筆記具』の代名詞としても知られているブランドのひとつが『Montblanc(モンブラン)』です。
現在においては筆記具のみにとどまらず、さまざまなアイテムを販売する総合ブランドになりましたが、発祥は今から約110年前のドイツで、筆記具を作るメイカーとして創業したことから始まりました。
今回は、モンブランから販売されている筆記用具の中からボールペンに焦点を当ててみます。
わたしはモンブランのボールペンをかなり長い間使用していますが、価格はさておき、たくさんの魅力が詰まっている素晴らしいペンです。
ちなみにタイトルにある№164というモデルは、厳密に言うと現在は販売されていません。
現在では『マイスターシュテュック クラシック』と名称を変更された同型のモデルとして販売されています。
タイトルで『世界で最も美しい』などと大仰なことを書きましたが、無論これはわたし個人の考えでして、異論はたくさんあるでしょう。
筆記具を愛する皆さんにとって『最も美しい』と感じるペンはそれぞれ異なるはずです。
モンブラン№164の持つ魅力
今回この記事の中では『№164』と表記を統一させていただきます。
呼びやすいのと、わたし個人がこの名称が好きなためです。
それでは、モンブラン№164の持つ魅力を紹介していきましょう。
見事なサイズとバランス
モンブランから販売されている筆記具の多くに共通しているのが、『モンブラン樹脂』もしくは『プレシャスレジン』と呼ばれる天然素材で作られ、職人による手作業で磨き上げられた美しい本体です。
筆記状態で握り込むとしっくりと指先になじみ、細くも太くもない胴軸のサイズは、とても持ちやすさに優れています。
わたしが所有している№164の中で最も古いものは25年以上前のモデルになります。
かなり使い込んでいますので、本体表面の艶も無くなってしまい、細かい擦り傷が無数についてしまっていますが、愛着という点においては最新のモデルでは得られない独特の感覚があります。
とはいえ、他のモデルに気持ちが傾いてしまったことがないわけではありません。
何年も前に、モンブランから『スターウォーカー』というシリーズの筆記具が販売されました。このシリーズのボールペンで『ブラックミステリー』というデザインのものをわたしの知人の医師がカルテを書き込むのに使っているのを見かけたとき、「芋虫みたいな形のボールペンだな」と思いました。
一見した限りではそのペンがモンブラン製だと気づきませんでした。
スラスラとカルテにペンを走らせる彼を見ながら、なんとなくペンの尾部に目をやった時、モンブランの代名詞であるホワイトスターが見えたのです。
まさかモンブランがこのようなデザインのペンを創るとは思いもしませんでしたので、それなりに驚いたのですが、これまでのモンブランにはなかったモダンな表面デザインに魅力を感じ、同じものを一本購入しました。
開封して初めて持ったスターウォーカーの感想は「重っ!」でした。
それまで使用していた№164に比べ、カタログ数値で約10gスターウォーカーの方が重いようです。
たかが10g弱ですが、筆記具にとっての10gはかなり大きな数値です。
ずっしりとした重厚感とモンブラン製品独特の見事な艶に、確かに所有欲を満たされました。
その後しばらくの間スターウォーカーを使用してみましたが、その重さに慣れるまで多少の時間がかかりました。
私見ですが、スターウォーカーは万年筆の№149のように、ペン自体の重さを利用して筆記するのではないかと思います。
さて、スターウォーカーのレヴューは機会を改めるとして、数ヶ月間ののちに№164を手にして筆記を始めた瞬間、その扱いやすさに改めて感動を覚えました。
それまで使っていたスターウォーカーのようにずっしりとしているわけでもなく、指で握り込んだときにしっとりと馴染み、極端な表現をしますとペン自体の重さを感じさせないほどに見事な重量バランスに造られていることが解ります。
同軸の中央部分がわずかに膨らんだ柔らかく女性的なデザインは自然な筆記状態を作り出すことができ、長時間の筆記でも指先が疲れづらくなっています。
№164のサイズはカタログ数値で全長約137mm、最大径は12.5mmと決して大きいものではありません。
手元にある他の筆記具と比べてみますと、三菱ユニの蛍光マーカー『プロパスウィンドウ』とほぼ同じサイズですね。
実際に使用してみるとわかりますが、ペンを握り込んだときに手指にかかる負担がほぼありません。
例えば鉛筆のように同軸が細すぎないため、手のサイズが小さめの方でも強く握り込まずに筆記できます。
また全長も137mmと大きすぎないので、前述のように筆記時のバランスに優れています。
わたしは手のサイズが大きい方ではありませんが、わたしが№164を筆記状態で握った時は上の画像のような感じになります。
人差し指と中指の先端で軽く挟むようにして、親指を添えるようにして構えますと、親指と人差し指の付け根の中間あたりにペンの尾部が当たり、ここに負荷が掛かります。
筆記をするということは人差し指と中指の先端を支点として、親指と人差し指の付け根あたりが作用点として働くということですが、長時間の筆記を続けますとここに痛みが出たり、我知らず指先に力が入ってしまい、指先の疲れが溜まってきます。
そもそもペンの握り方によって人それぞれ指先の疲れは異なってきますが、わたしが使用してきた限り、この疲れが出にくいと感じます。
長期間に渡って全体的なデザインの変更がほぼ無いということが、ある意味完成された形状であるとも言えるでしょう。
シンプルながら完成されたデザイン
まるでピアノのような深い艶を湛えた黒色の本体に、先端部とクリップ、そして胴軸中央部の三連リングのみ金色に染められ、尾部にモンブランのトレードマークである『ホワイトスター』を冠したシンプルなデザインは、数十年前からほとんど変更なく現在も採用されています。
現在では廃盤になっているのですが、本体色がボルドー(葡萄をイメージした、くすんだ赤に近い色味)のモデルも販売されていました。
黒い本体色とは異なった魅力を持つモデルでしたが、廃盤になったのは残念ですね。このモデルは現在ではオークションサイトなどで出品されているのを見かけることがあります。
また後年になって金属部分がプラチナ装飾されたモデルも発売されましたが、個人的には昔ながらの金装飾が気に入ってます。
ちなみにですが、プラチナ装飾されたモデルは定価でも二千円ほど高価に設定されています。
リフィルの持つ魅力
海外製ボールペンのリフィル(替え芯)で有名どころといえば『カランダッシュ』のものが挙げられます。
現在ではどうかわかりませんが、一昔前は『世界で最も書き味が良いリフィル』と呼ばれていました。
確かに書き味が良かったのは間違いないのですが、近代になって新たに文房具メイカーが開発したゲルインクなどと比べると、サラサラとした書き味ではさすがに分が悪いでしょう。
ですのでここでは昔ながらの油性インクのみを比較してお話を進めていきますが、モンブランのボールペンリフィルはカランダッシュのリフィル『ゴリアット』と比べて、勝るとも劣らない書き味の良さを誇るとわたし個人は考えています。
その理由の一つとして挙げられるのが、カランダッシュのリフィルと比べて本当にわずかなのですが、筆記可能な角度が広いという点です。
要するに、カランダッシュのボールペンに比べてモンブランはペンの角度を寝かせ気味にしても筆記できるということです。
カランダッシュもモンブランもボールペンリフィルの先端サイズは細いものから『F』『M』『B』の三種類ありますが、同じサイズのリフィルで比べてもモンブランのリフィルの方が筆記可能角度はほんの僅かですが広いようです。
おそらくこれは、リフィル先端に入っているボールの径や材質が各メイカーによって異なっているということに起因するものだと思われます。
さらにはインクの粘度や材料によっても書き味は変化します。
カランダッシュのインクは書き味が軽く、ほとんど筆圧をかけずにペンを走らせることで線がひけます。書き味を音で表現するなら『さらっ』という感じです。
対してモンブランのインクはカランダッシュに比べて書き味が少し重く、ほんの少し筆圧をかけることで美しい線がひけます。モンブランのインクの書き味は『ぬるっ』と表現するユーザーが多いようです。
これについては完全に個人の好みが出るところではありますが、わたしはこの『ぬるぬる』とペンを走らせるところがモンブランのリフィルの魅力だと感じます。
オークションサイトの利用
ここからは自己責任の色合いが強くなるのですが、少しでも安価にモンブランを入手するための手段として、オークションサイトを利用することについて少し言及します。
モンブランのペンは偽物が多く出回っていることでも有名です。
特に比較的販売数が多い№164は、オークションサイトでも偽物が多く出品されています。
数年前にわたしも興味本位で一本、「偽物だろうな」と思われるものをあえて購入しました。
実際に手に取ってみて本物と偽物との違いがいくつか理解できましたので、その点をここに挙げます。
まず一番わかりやすかったのがボールペンの口金の先端です。
本物のモンブランは口金の先端部がまるく加工されており、なめらかな手触りなのですが、偽物の方は口金の先端がカットされたままの状態のようにフラットになっています。
画像右端が偽物、真ん中は本物の№164、左端は本物の№161です。光の加減で判りづらいのですが、右端のペンの口金の先端がまるで切りっぱなしのような状態に対して、本物は口金の先端が丸められているのがわかると思います。
他にもいくつか明らかに本物とは異なる部分があるようですが、正直かなり本物に似せられているため、実際に手に取ってみないと真贋を見抜くのは困難かもしれません。
他にもクリップの裏側の加工、『MONTBLANC MEISTERSTUCK』の刻印の形状やフォントなども本物とは異なる点があるのですが、これについては各時代によって本物であってもそれぞれ少しずつ変化していますので、ここだけで見抜くのは難しいでしょう。
それではどうやってオークションサイトに出品されているペンの真贋を見抜くかということになります。
あくまでもひとつの目安としてですが、本体にネームなどの刻印がされているユーズドのものを狙ってみるのも良いかもしれません。
基本的に刻印はモンブランブティックや取扱店のみでサービスのひとつとして利用できます。
つまり刻印をした前オーナーはモンブランの正式な取扱店で購入されたと考えることができます。
前オーナーのイニシャル等が刻印されているものを使用することに抵抗がある人もいらっしゃるとは存じますが、気にならない方は少しでも偽物を掴まされないための安全性を高めるための手段として捉えることもできるでしょう。
あとは本体を分解している画像を上げている出品者のものを狙うのもひとつの手だと思います。
オークションサイトは、筆記具好きの方がコレクションを手放す場合に利用することも考えられます。
商売(転売など)でオークションサイトを利用している人も多いでしょうが、そういった方々のほとんどはわざわざ出品しているペン本体を分解などしていません。
モンブランのボールペンは簡単に分解することができますが、分解方法を知っているか否かは、出品者の知識をある程度知ることができます。
現在での№164のオークションサイトでの相場は13000円程度から20000円前後のものが多いようです。
20000円を超える品も見かけますが、出品者の考え方によって価格を決定しますので、値が高いから本物でさらにコンディションが良い、と言い切ることはできません。
いずれにせよ、オークションサイトを利用して一本入手したいとお考えの方は、出品者の評価やどのような商品を出品しているのかといった基本的な情報をよくみた上で、信用に値する出品者か否かを決定してください。
さいごに
近年になって筆記具のみを取り扱うメイカーから、さまざまなアイテムを販売する総合ブランドに大幅な転換を果たしたモンブランですが、ブランドの根幹には創業時から取り扱っている筆記具があることは間違いないでしょう。
筆記具好きの中にはこのモンブランの『方針転換』をネガティブに受け止めた方もいると思いますが、それでも高級ラインのアイテムは職人がひとつひとつ手作業で仕上げをするといった、昔ながらの矜持を持ち続けています。
モンブランの高級ラインである『マイスターシュテュック』シリーズは今回紹介した№164(クラシック)であっても現在の定価は五万円を超えます。
ボールペン一本の価格として考えるならば、正直おいそれと購入できるようなアイテムではありませんが、ものを書くのが好きな方にはお勧めできるペンです。
かつてドイツという国が東西に分断されていた時から№164は存在していました。
それから数十年が経ち、名称は変わってしまいましたが、現在でも当時とほぼ同じカタチのペンが販売されています。
世界広しと言えど、なかなかこのような商品を見ることはできません。
多くの人に愛され続けてきた職人技の結晶ともいえるモンブランのボールペンは、一本購入したならば、長年にわたって大切な相棒となってくれるでしょう。
それでは、今日も良いカキモノ日和となりますように!